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相続税と所得税を基礎から考え直してみましょう。

2010 - 11/28 [Sun] - 19:26

 もしかして既に何回も書いている話になっちゃうかも知れませんが、もう一度相続税と所得税のことについて基礎から考えてみましょう。

 普通の納税者にとっては所得税についてはイメージが掴みやすいものの、相続税については今ひとつ合点がいかない方も多いと思います。税理士の中にも「相続税がなぜ課税されるのか」という理由についてそれほど深く考えていない人もおられるかも知れません。

 税理士試験で相続税を勉強しても、習うのは相続税法の各計算規定と「富の再配分」という言葉くらいだと思います。「なぜ本当に相続税が課税されなければならないのか、なぜこんな税金ができたのか、そして所得税との兼ね合いはどうなのか」ということについては無頓着である場合も少なくないと思います。

 租税法の専門書を読めばもちろんいろいろと課税の根拠が書いてあります。しかしそういった専門書でも結構課税庁が発表する理解しにくい通り一遍の理由だけ書いている本が多く、「じゃあ本質はなんなの?」という問いに答えられていないものが多いです。

 ということでフリが長くなっちゃいましたが、まずは相続税の目的から考えましょう。もちろん最大の目的は「富の再配分効果」ですよね。よーするにどういうことかといえば、もし相続税がなければお金持ちは何代経ってもたいした努力をしなくてもお金持ちのままでいることができます。逆にお金がない方は自助努力で相当な成功を納める以外に貧乏から抜け出すことができません。

 民主主義、自由経済主義の世の中において、人が生まれた時点で既に家庭環境によってそこまでのハンディをつけられていて、しかも階層が固定化されることは望ましくない、ということでお金持ちのご家庭からは代替わりするたびに相続税として資産の一部を召し上げて、その財産をまわりまわって世の中の多くの人、特に経済的に恵まれていない人達に行き渡るように分配してあげることがその意義ですよね。

 まあ税というものには少なからず「富の再分配機能」があるわけでして、相続税だけにその機能があるわけではないのですが、相続税は特にその部分に特化して設けられた税金であると考えていただければよいでしょう。

 他にも相続税を設ける理由としては、お金持ちをどんどん栄えさせるようにすると政治的な影響力を持つようになって公平な民主主義を歪めてしまったり地方自治体や国家を脅かす存在になってしまいますので、これを抑制するために相続税が設けてるという意味もあります。

 もう一つしばしば租税法の本に書いてある目的として、「被相続人の生涯所得の精算機能」という言葉が出てきます。これはある人がその生涯において取得した富や財産について、その値上がり益などについて所得税課税されていない部分があるので、その人が死亡したときに精算して課税しよう、ということです。

 しかしこれを基にして相続税を考えると所得税とごちゃごちゃになってしまう恐れがあり、また清算課税をなぜおこなう必要があるのか、という根本的なところに大きな疑問を感じてしまいますので、私はこの説はほとんど支持していません。

 ですので、まず基本は相続税の目的は「富の再配分機能」だと思って下さい。それで次に「何に着目して課税するのか」ということですが、これは「相続によって被相続人からタダで財産をもらってトクをしたという事実」に着目して相続税が課税されていると考えるのが妥当だと思います。

 つまり「自分で働いたわけでもなく、ただ単に先代が努力して手に入れた財産をタダでもらってラッキーなだけなんだから、ラクしてトクしたあなたから税金もらいます。」ということです。だから所得税とは全く課税根拠が違うわけです。

 相続税は「先代からの棚ぼた利益に対する税金」であり、所得税は「自分が稼いだ利益に対する税金」なわけで、全然課税する理由が違うんです。だから普通に考えれば相続税と所得税が二重課税になることなんて「ありえない」わけです。

 例えば相続で先代からの不動産を取得してこれを同じ年に売却した場合を考えてみましょう。まず先代から不動産を「タダでもらった」という事実に着目して相続税が課税され、そしてその不動産を売却して利益が生じたらその「不動産を売って儲けた利益」という事実に着目して所得税が課税されているのです。

 同じ年になんだか2回税金を取られているような感じがしますが、課税する理由が全く違うのですから二重課税ではありません。だってもし先代がその不動産を売却価格よりも高い価格で買っていたのであれば不動産を売ったときの所得税は課税されません。ですから所得税はあくまで不動産を売って「儲かれば」かかってくる税金であって、儲からなければかかってこない税金です。だから二重課税ではないのです。

 そう考えてみれば、相続税と所得税の二重課税問題など生じるはずがないのです。先日このブログに書きましたように、所得税9条に書いてある「相続税課税財産は所得税の非課税」という規定は、「相続によって財産を得た利益(=所得)については所得税を課税しない」という意味だけの話なのです。だって「相続によって財産を得た利益」については相続税で課税されているからです。

 だから相続で得た財産をその後売却して利益が出た場合や、相続で得た不動産から家賃収入を得たばあいには当然所得税が課税されるわけです。所得税が非課税となっているのは「相続で財産を取得したとき」の経済的利益の話に限定されるのであって、それ以外のケースで生じた所得については所得税が当然課税されるわけです。

 今回の年金保険金についても、本来であれば相続税だけが課税されて終わるはずだった死亡保険金を分割払いにしたがために所得税も課税されてしまっていたことに問題があっただけのことなのです。本当にレアケースだったわけです。

 ところがこれを法律的に説明しようとすると所得税9条1項16号(以前の15号)を持ち出してこないと説明ができないので、判決文だけを読んでいるとなんだか年金保険以外の相続財産にも二重課税の可能性があるのではないかという誤解を生じさせてしまったわけです。

 でも普通に考えてみれば、上記のようにそもそも相続税と所得税の二重課税なんて生じる余地がなかったのです。今回の死亡保険金の年金払いのような特殊なケースだけが誤って二重課税されていただけのことで、それ以外にはまずありえない話だと思っておけば良いと思います。

 やっぱり良く考えれば考えるほど、税法は上手くできています。今回の裁判を起こした方達はこの法のミスについてよく論理的に気がついたもんだと思います。しかし最初にこの点に気付いて裁判を起こした江崎税理士さんのお考え(平成22年9月15日付 「税理士界」ご参照)を読んでいると、これはあまり一般的な法解釈や税理論ではないと感じますね。

 裁判では結果的にはもの凄いレアケースな法律の不整備部分を見つけ出したわけですが、だからといってあまり範囲を拡げて相続税と所得税の二重課税を世に問うべき話ではないように感じますね。見方を変えれば、最高裁の判決が逆に常識的な法解釈を示すことで江崎税理士さんの行きすぎた二重課税論にストップをかけているようにも見えますね。

 今後この二重課税の問題で裁判が起こされる余地はまずないと考えて良いのではないでしょうか。やはり良く考えればそういう結論に落ち着くと思います。

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