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インボイス制導入時の免税事業者排除の懸念

2017 - 10/25 [Wed] - 12:33

消費税の複数税率制導入が決まったあたりからたびたび懸念材料として話題になる点として、「インボイス制が導入された場合には免税事業者はインボイスを発行することができないので、免税事業者からの仕入については仕入税額控除を行うことができなくなり、それが理由で免税事業者が取引から排除される恐れがある」と指摘されてきました。

・・でも、これどう考えても論点がおかしくないですか??

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半年ほど前の「税のしるべ」を今さらながらに読んでいて、この「免税事業者取引排除の懸念」が記事に書かれていて、その内容が理解できずに何度か読み返していたのですが、ようやく記事が意図するところが理解できました。

記事の内容は大まかに書けばこんな感じです。「現行制度では免税事業者からの仕入でも税額控除できる。しかし、インボイス制になれば、課税事業者しかインボイスは発行できなくなる。そのため税額控除できない免税事業者から仕入れると消費税の計算上税額控除できなくなって不利になるので、免税事業者が取引から排除されてしまう」という内容ですね。

これ、パッと読めば「ああ、そうだなぁ、そうなっちゃうよなぁ」とつい考えちゃいますよね。でも、この内容、二つの点で大きな問題があるんです。

まず一つめの問題点。この免税事業者排除の話に関しては、大前提として「免税事業者は消費税を顧客から徴収しても良いのか?」という点が全く明らかにされていないこと。というより、先ほどの記事の要約を見ていただければおわかりのように、この記事の大前提としては明らかに「免税事業者であっても消費税は顧客から徴収しても良い」ということがあるものとして内容が書かれているんです。

この「免税事業者は消費税を顧客から徴収しても良いか」という点についてはこのブログにいままで何度も書いてきましたように、私自身は徴収するのが当然、と考えています。だって消費税法の条文にそう書いてあるからです。条文の流れとしては「事業者は消費税を徴収しなければならない。ただし、売上の少ない事業者は納税義務がない」と書いてあるだけであって、「免税事業者が消費税を徴収してはならない。それは違法だ!」なんて条文のどこにも書いていないからです。

そして、今回の免税事業者取引排除の話についても、よくよく内容を読み返していっていますと、じつは「免税事業者も消費税を徴収して良い」ということを大前提として話が進められています。だってそうでなければ、免税事業者を取引から排除する必要性など全くないからです。

考えてみてください。もし免税事業者が顧客から消費税を徴収しないのであれば、税抜1万円の商品を免税事業者から購入した場合、購入価格は1万円です。インボイス制が導入された際には、免税事業者からのインボイスは発行されませんので、インボイス制の導入後は仕入税額控除は0円です。

一方で、課税事業者から税抜1万円の商品を仕入れた場合、消費税額は10%(インボイス制は税率10%で導入される予定ですので税率は10%で考えます)で1千円となります。では商品を仕入れた事業者が消費税を納めるときにどんな損得があるのかといえば、仕入税額控除額は免税事業者からの仕入は0円、課税事業者からの仕入は1千円ですから、同じ1万円の商品を仕入れるのであれば課税事業者から商品を仕入れたほうが消費税の納税額は1千円安くなります。

でも、そもそもその事業者は免税事業者から仕入れる場合には1万円しか払わないのに対して、課税事業者である仕入れ先には税込11千円払っているのですから、消費税の納税額の損得を含めて考えた場合にはどちらの仕入先から仕入れても損得は発生するはずがないんです。

そして、もう一つの問題点は「なぜ免税事業者はインボイスを発行してはならないのか?」という点。この免税事業者取引排除論が話題になるときにはなぜか「免税事業者はインボイスを発行できない」ということになっています。しかし、なぜ免税事業者はインボイスを発行できないのでしょうか?別に発行すればいいんじゃないでしょうか?

ここで、免税事業者がインボイスを発行できない理由というのは「免税事業者は顧客から消費税を徴収していないから」ということにあるわけですよね?だからインボイスが発行できないはずなのです。でも先ほどの一つ目の問題点の内容を見ていただければわかるように、免税事業者取引排除の話の前提は「免税事業者も消費税を徴収してよい」というところに立って話が進んでいたはずなのです(笑)。だってそうでなければ話が成立しないからです(笑)。

つまり、「免税事業者は顧客から10%の消費税を徴収して良いのだけれども、インボイスは発行できない。」という前提になっているのです。その前提であるのなら、確かに免税事業者から税抜1万円の商品を仕入れた場合には1千円の消費税も支払って合計11千円となるのですが、その仕入れについては免税事業者からインボイスがもらえないので消費税の計算上は1千円の仕入税額控除を行うことができず、課税事業者から仕入れた場合と比べて消費税の納税額が1千円高くなってしまう、というストーリーが成立するのです。

あれ?でもおかしくないですか?「免税事業者は消費税を徴収しても良い、でもインボイスが発行できないから取引先から排除される懸念がある」といっている一方で、「免税事業者は消費税を徴収してないんだからインボイスが発行できない」だなんて、話の前提があっちこっちにいってませんか??(笑)

結局、どっちなんだよ!って話になっちゃうわけです。免税事業者が消費税を顧客から徴収しても良いのなら免税事業者がインボイスを発行すれば誰も損しないので取引排除の懸念など生じないし(もちろん免税事業者に益税が生じ、その益税相当額を消費者が負担している、という別の問題点はありますが)、逆に免税事業者は消費税を顧客から徴収してはならない、ということであるなら、免税事業者からの仕入額は課税事業者からの仕入と比べて消費税額相当分安く仕入れられるはずなので、消費税納税時の仕入税額控除の損得の話など端から存在しようがない、ということになるんじゃないでしょうか?

なんか話がメチャクチャなんですよね。ストーリーの前提がメチャクチャなんです。結局全部「インボイス制度を導入したら免税事業者が不利になる」というストーリーを書き上げるために都合良くあっちとこっちを持ってきて話を作り上げているようにしか思えないんですよね。

冷静に考えればインボイス制になったって免税事業者が損をしないで済む方法なんていくらでも考えられるはずなのに、そこを考えようとしないで、ただ「インボイス制は免税事業者を排除する悪い制度」と印象づけたいとしか思えないんです。もちろん先ほどちらっと書きましたように、免税事業者がインボイス発行可能となった場合の免税事業者における益税の問題はあります。ただそれは現行制度においても広く一般的に行われていることだし、何度も書きますように税法上そこは問題が無いことになっているわけですから、免税事業者の益税の話をインボイス制の議論の中で持ち出すのはおかしいと思いますね。

この免税事業者のインボイス発行不可、の話はインボイス制を以前から導入しているヨーロッパの制度を参考にしている話のようですが、なにも何でもかんでもヨーロッパの制度をそのまま導入する必要なんてないでしょう。今の時代はICT機器も発達してきているわけですし、ヨーロッパにおける付加価値税制度の問題点は解消できるように考えながら日本に導入すればよいだけのことではないでしょうか?

とにかく、このインボイス制でも結局議論を曖昧にさせてしまうのは「免税事業者は顧客から消費税を徴収しても良いのかどうか?」という点にあるわけですから、10%に消費税率が上がり、複数税率とインボイス制の導入を検討する前にこの点の是非をしっかりと整理して話を進めていけばどうでしょうか?

そうすればインボイス制の免税事業者取引排除論ももっと冷静に検討できるでしょうし、もっといえば、これも私個人としてはずーっと疑問に思ってきていたことですが、免税事業者が課税事業者になる際や、逆に課税事業者が免税事業者になってしまう際の「1千万円は税込額か税抜額か?」の問題点もクリアになりますからね。

私個人の考えでは、こんなの当然「税抜額」ですよ、だって免税事業者だって顧客から消費税を受け取ってもいいわけですからね。当然課税事業者になるかどうかの判断は、その総売上高から消費税分を抜いた税抜売上総額になるべきに決まってます。

そこに益税の問題があるかどうかについては、全く別の問題です。でも益税、益税、といっても、免税事業者だって仕入や経費に対して消費税は支払っていますので、その益税相当額はあくまで売上額から課税仕入・課税経費を引いた利益相当額に対する程度しか残りません。それに、その益税分は確かに消費税としては税務署に納付しませんが、代わりに法人税や所得税などが課税されてます。

逆にもし売上に消費税を顧客から徴収することが許されないのなら、日々の仕入にかかる消費税額分だけを免税事業者は損をしてしまうことになります。それはやはり事業を行う上においておかしくないでしょうか?売上規模が小さい事業者が、顧客に対して消費税を請求できないせいで課税仕入にかかる消費税相当額だけ損をするなんて、それじゃこれから商売しようと思う人がますます減ってしまいます。

そんな損をさせるくらいなら、小規模事業者を支援するという意味合いからもわずかながらの益税が生じることくらい大目に見ていいと思いますし、もっといえば免税事業者が消費税を顧客に請求してはいけないのなら輸出免税事業者と同じように仕入にかかる消費税額の還付を受けられるようにしたらよいのではないでしょうか?それは医師などの非課税事業者についても同じように還付すればよいのではないでしょうか?

まあ、もちろんそれが制度として大変であり、還付するのも納税者も国税も大変、というのなら大きな観点から益税やむなし、と考えるのが一番ラクなのかな、と考えたりもするのです。

なにしろ、インボイス制における免税事業者取引排除の話を真面目に検討するのであれば、免税事業者の消費税収受の是非をいま一度しっかりと社会の共通認識として統一させるべきだと思いますね。平成元年に消費税制度が導入されて以降、なぜかこの点には誰も真剣に触れることがないまま国税と納税者(事業者)・税理士はそれぞれが自分たちに都合の良いように解釈をしたまま30年近い月日が経ってしまいました。

ここをしっかりと整理しないことには今後導入されるであろうインボイス制度も論点がはっきりしないままです。ぜひしっかりと線引きを行い、個人的にはもちろん「小規模免税事業者は当然消費税を顧客から徴収して良い。インボイスももちろん発行可」ということになってほしいと願います。

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