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役員報酬、高すぎる? 「残波」蔵元、国税と訴訟に

2014 - 11/02 [Sun] - 10:27

ネットのニュースを見ていますと、なんでも役員報酬が高過ぎるとして課税処分を受けた酒造メーカーが、その処分を不当として裁判を起こしているのだそうです。

役員報酬、高すぎる? 「残波」蔵元、国税と訴訟に

私も以前より役員報酬の損金算入について法人税法で一部否認する規定があるところに疑問を感じ、このブログでも何度も指摘をしてきていますので、今回の訴訟の行方については大変興味があります。そもそも、同族会社であるということだけを理由にして、なぜ「役員報酬が不相当に高い」云々という指摘を国税から受けて、その損金性を否定されなければならないのか理解できませんね。

上場企業であれば、例えば某自動車メーカーの役員さんは約10億円の報酬を受け取っていると聞きます。この報酬額は同業他社と比較すれば明らかに「不相当に」に高額と言えますよね?ですが、この10億円の報酬額が不相当に高額であるからといって、国税から損金不算入との指摘を受けたという話は聞いたことがありません。

その理由は、その自動車メーカーが上場企業であるから、ということだと思います。つまりいくら同規模の同業他社の役員報酬と比較して不相当に高額な役員報酬であったとしても、きちんと株主総会において不特定多数の株主の同意を得た上で支給している以上、それは決して「不相当に高い」とは言えない、ということなのだろうと思います。

一方で今回の酒造メーカーの件で言えば、きっとこの酒造メーカーは比較的小規模の同族会社なんでしょうね。泡盛を飲まないのでこのメーカーに関する知識は全く持っていないのですが、なんでも「残波」という泡盛が大変売れているメーカーなのだとか。

で、相当な利益をあげることができたので、役員報酬を高く設定し、退職した役員さんへの退職金もたくさん支払って、そして確定申告をおこなったところ、国税から「役員報酬が不相当に高い」との指摘を受けたようですね。同族会社であれば、ごく限られた一族の株主だけでお手盛り決議をすることができ、役員報酬だって自由自在に決定できるので、「そんないい加減な手続きで決められた高額役員報酬を税務上認めていたら、法人税を取ることができなくなるから絶対に許せない!」と国税は言いたいのでしょうね。

しかし、おかしな話なんですよ、そもそも。以前から何度も書いていますように、そんなに同族会社の税務が信用出来ないのであれば、同族会社の存在を日本国として認めないようにすればいいのにと思いますね(笑)。だって仮にも、それなりの費用をかけて登記をし、会社法などの法律でも「法人」としての存在が認められているにもかかわらず、なんで税務上の扱いにおいて同族会社と上場企業とでこのような違いがあるのか理解できないですね。

確かに、同族会社であれば、一部の支配株主によって容易に会社の経営方針や、役員報酬などが決定されてしまうことになるので、その状況は個人事業と何ら変わらない、という意見もあるかもしれません。しかしさきほども書きましたように、そうは言っても法律上れっきとした法人であり、そこで意思決定されたことはあくまで法人としての意志であり、株主構成だけで個人の意志と都合よくみなされるのはおかしいと思います。

そもそも、個人であれ、法人であれ、儲かっていればたくさんのリターンを経営者に対して支払おうと思うのは当然のこと。国税側は、従業員の給料がたいして変わっていないのに、役員の報酬だけが上がるのは不相当、と指摘しているようですが、そんなの理由にならないですよねぇ?だって、経営が悪くなれば全責任を負って自分の報酬をカットし、経営が良くなればそれに応じて自分の報酬をあげるのが経営者、役員でしょう?

なんで役員報酬を従業員給与と連動させる必要があるのか、そんなこと各企業の経営思想の問題なんだから、ほっといてくれ、と言いたいところです。従業員の給与を業績と連動させるかどうかだって、そんなもの各企業の経営思想に基づいて独自に決めればよいだけのことです。

そして、これが税務上の役員報酬損金不算入問題における最大の争点だと思いますが、この裁判において弁護士さんが指摘しているように「そもそも、今の税務においてはこのレベルの役員報酬になれば、法人税より所得税のほうが税負担は大きい。それなのに、いまだに『恣意的な役員報酬を支給されると法人税収を確保することができなくなるから許せない』的な理由で役員報酬の損金算入を認めようとしない規定があるのか理解できない」というところなんですよね。

もうこれは理屈になっていないのです、まったく。だってトータルで考えてみれば、法人税と所得税のトータルで税収が確保できればいい話で、実際問題として、この会社だって役員報酬を低く抑えて法人税を支払う額よりも、多額の役員報酬を払うことによって支払うべき所得税のほうが絶対に高いはずなのです。国税とすれば、高い税収が得られているはずなのに、なぜそこで「役員報酬が不相当に高すぎる」などという難癖をつけてくる必要があるのか、意味がわからないのです。

いえ、もちろん私も税理士ですから、その理由はわかりますよ(笑)。国税がそういう指摘をしてくるのは、そりゃ、法人税法でそういう規定があるからにほかなりません。あくまで国税側は法人税の規定に基づいて、取れるものは取ろうとしているだけに過ぎません。今回のケースでも、もしこの役員報酬が不相当に高額であるとするならば、その不相当に高額と認められた部分については法人の損金算入ができなくなって、法人税を多く取ることができますからね。

この規定の都合よいところは「それじゃあ不相当に高額と認められたところは法人の損金としては認めないけれども、所得税はあくまで報酬として支払った全額から取ります」というところですよね。ええ、はっきり言って二重課税が可能となるわけです。別に悪意を持っているわけでも何でもなく、ただ、会社が猛烈に儲かったから会社法の適切な手続きに則って役員報酬の金額を増額したにも関わらず、何の違法性もないのにまるでペナルティでも課すかのように、所得税は支払った役員報酬全額に対して徴収することは変えない上に、不相当に高額と国税が認定した役員報酬の部分について法人税まで徴収するなんて、理不尽この上ないと思いますね。

そもそもこんな規定があるのは、所得税率と法人税率のバランスの問題で、法人税率のほうが所得税より高いと誰もが「じゃあ、高い法人税を支払うくらいなら、役員報酬を高くして所得税を支払うほうが節税になる」と考えてしまい、それじゃあ法人税収をさっぱり得ることができなくなってしまうので、そのように恣意的に納税額をコントロールできなくするためにこのような規定を設けたのだと思います。

しかし、何度も書いていますけれども、それなりの報酬を得ている役員について言えば、その役員報酬から得られる所得税のほうが、その役員報酬がないものとして計算された法人税額よりも高いことなんていくらでもあるんですよね。今回のケースに関して言っても、役員報酬は一人あたり億のレベルでしょうから、その役員報酬を会社が支払わないことで得られる法人税額より、役員報酬を支払うことで国税が得られる所得税のほうが断然多いはずなんですよね。

国税として十分過ぎる税収が得られているにもかかわらず、こんな難癖をつけてくる理由はただひとつ、「税法に役員報酬を否認できる規定があるから」というだけのことです。だからグリコのキャラメルよろしく「一粒で二度おいしい」としか思えないこの理不尽な規定を振りかざして、単なる二重課税にしか思えない法人税を取りに来ているだけなのです。はっきり言ってこんなめちゃくちゃなことありません。

まあ、この会社の税務処理の詳細を承知していないのであまり無責任なことは言えませんけれども、個人的には納税者側に勝訴してほしいと思います。そして判決文において「現在の法人税法第34条第2項の規定は、現状に鑑みて著しく合理性を欠き、単なる二重課税の詭弁として利用されているにすぎないので、適切に見直されることが相当と思われる」とでもコメントしてほしいものだと思います。

どのような判決がくだされるのか大いに興味があるところですが、この仕事を始めてから私がずっと疑問に思い続けてきた役員報酬の二重課税問題に対して、何らかの一石を投じるケースになってほしいと期待しています。

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