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国際的租税回避スキーム

2013 - 05/28 [Tue] - 12:08

 昨日のNHKクローズアップ現代を見ておりますと、最近税務の世界で話題の国際的租税回避スキームについて説明していましたね。私も税の世界に生きている人間ですから、国際的節税(租税回避)スキームについては大いに興味を持っています。

 最近は、イギリスで巨額の利益を得ているはずのスターバックスが、ほとんどイギリスに納税を行っていないということを知った市民によって猛烈な抗議デモと不買運動を受けましたし、アップルもアメリカへの納税額が少なすぎると議会から責め立てられています。グーグルやその他のグローバル企業も、多かれ少なかれ、同様のスキームを行っているといわれています。

 国際的な租税回避スキームについては、私も詳しいことは知りません。テレビでは「会計士や税理士のような専門家達が『タックスプロモーター』として企業にアドバイスを行っている」と言っていましたが、海外の税法の詳細など全く知らない、私のような税理士がそんな大それた知識など持っているはずがありません(笑)。

 しかし、大手会計士事務所や、それに付随する大手税理士法人であれば、世界中で経営を行っている企業の監査やコンサルティングに携わることによって、そういった世界各国の税法の抜け道をよく知っているでしょうね。そういった知識に関しては、私たち個人事務所が大手事務所に勝てるとは到底思っていません。ましてや、ちょっとした節税スキームを耳にしたからといって、現地の税務の実態や租税条約の内容も知らないのに顧客にその実践を勧める、という素人のようなことは怖くてできません。

 番組によりますと、大まかなスキームの内容は、法人税率の低いアイルランドやケイマンなどのタックスヘイブンに関連会社を設立して(場合によっては本社を移す)様々な権利を移転させるのだとか。そして、経営コンサルティング料とか、原材料の仕入れ、などの名目を使って利益を、そのタックスヘイブンにある会社に移転させて節税(租税回避)を実現させる、ということのよう。

 またある日本の企業が行っている租税回避法は、日本から税率の高い国の関連会社に対してコンサルティング料か何かを払っていたのだそう。一見、租税回避スキームに見えないのだけれども、しかし、実はその国では「組合」(事業組合?投資組合?忘れました)は非課税になっていて、その国の組合は単にトンネルに利用するだけで、最終的な資金の行き先はタックスヘイブンに設立した関連会社に資金を移転させることだったのだとか。

 最近は先進諸国各国がこういう国際的租税回避スキームによる税収減に危機感を覚え、連携して租税回避スキームの実態把握に乗り出しているのだとか。また、スイスやタックスヘイブン国などと税務情報の交換・開示ができるようにして、特に脱税の取締を強化しているのだとか。

 まぁ、そりゃわかります。私も個人的には「租税回避策」というのは好きじゃありません。しかし、ちょっと前に判決が確定した武富士の相続案件、あれなんか明らかに「租税回避策」だったじゃないですか。あんなオランダや香港を利用して贈与税回避を試みる手法に、一体どんな「税負担を不当に軽減させる」以外の理由があったというのでしょう?

 でも、日本の司法は、その手法を「不自然ではあるが、合法。国税の処分は不当」と結論づけたじゃないですか。そして、それによって「条文に書かれていないことを理由に課税することは、一切まかりならぬ」という「租税法律主義」の徹底が図られたんじゃないんですか?そして、その判決を「素晴らしい判決だ!」と賞賛していた税務の学者、実務家も少なくなかったじゃないですか。

 にもかかわらず、今回の国際的租税回避スキームについては、番組に出ていた三木先生(税務の世界では有名な先生ですよね)も「こんな租税回避策は許せない。法人として国から認められている以上、儲けに応じた納税をその国に行うのが筋」とコメントしておられたのですけれど、これについて私は強く違和感を感じましたねぇ。

 だって、今の税法、租税条約等で、条文として明記されていない手法によって税額を少なくすることは、租税法律主義に則って見れば、明らかに「合法」なんでしょう?裁判を行えば勝てるでしょう?だったら、それが法律によって規制されない限り、いくらでも利用して儲ければイイじゃないですか。そう思いません?

 武富士事件の判決を出した最高裁を「けしからん!」と批判するのであればまだしも、あの判決を「租税法律主義を重視した、画期的で素晴らしい判決だ!」と賞賛するのであれば、今回の国際的租税回避スキームだって「よくこんな手法を考えましたね。いや、これは企業の税コストを減らすための、素晴らしいスキームです」と賞賛すべきでしょう。

 結局、「税務の専門家」と呼ばれる人達だって、意見が割れている、というか、その時々で言うことがブレすぎるんですよ。武富士の租税回避は良くて、グローバル企業の国際的租税回避スキームはダメ、は通用しませんよ。そりゃ、完全に相反しています。武富士が良いのなら、グローバル企業もOK。逆に武富士がダメなら、グローバル企業の租税回避もダメ、といわなきゃいけないでしょう。

 「租税法律主義」の徹底を求めるのか、それとも税務の世界においては「疑わしきは罰する」のか。国民がその対策を国による法律の整備にのみ求めるのは、いささか無責任なように私は思いますねぇ。私は法律に必ずしも明文化されていないケースについても、こと税務に関してはその「意図」「目的」が「租税回避」にあるのであれば、課税できるようにして欲しいと願っています。

 その理由は、何度もこのブログに書いていますように、「課税の公平」を実現して欲しいからです。三木先生がテレビで語っていたように、国際租税回避スキームを実現できるのは大企業や超金持ちに限られるのですから、本来多くの税を負担すべきこれらの者が租税回避策を講じて納税を回避することによって、結果的にその税負担のしわ寄せは、そういう租税回避策を講じることができない一般庶民にすべて集まり、税負担に著しい不公平が生じるからです。

 租税法律主義は、確かに現代社会においては最も遵守すべきことであるかも知れませんが、しかし一方でやはり公平な税負担というものを実現させる社会でなければ、人々はバカバカしくってやってられません。すべてを法律で縛らなければ課税できない、というのは一見合理的に見えますが、実はものすごく不公平で不合理な面もあるのです。特殊な租税回避スキームが出現するたびに、いちいち法律を改正しなければならない、というのは逆におかしな話です。

 多少の批判は承知していますが、私は課税当局にある程度の「権力」「判断」を託すことも機動的な課税の公平を実現させるためにはしかたのないことではないかなぁ、と思っています。そんな、税法が改正されるのを待たなければ、ズルい連中に税金をかけることもできない、なんてバカバカしすぎると思っています。

 昨日の番組を見ていても思いましたけど、先進各国は自らが追い求める「租税法律主義」によって、結局は苦しめられているんじゃないでしょうか?租税法律主義を追求すればするほど、結局は法律を改正して、より複雑な税法を作り上げていくしか方法はないんですよね。

 しかし、それはこれだけ世界中に国があって、それぞれの事情があって税法を作り上げている以上、新たな法律を制定して租税回避スキームを防止する、なんてほとんど不可能だと思うんですよね。結局のところ、そこが各国における租税法律主義の限界ではないかと感じますし、そんな壮大でコストのかかることをやるよりも、一言「租税回避スキームはアウト。合理的な意図のないスキームは課税」というルールを各国で徹底すればいいんじゃないかな、と思ったりしますねぇ・・。

 もちろん、昨日の番組に出ていたアップルの経営陣の主張のように、企業の側から見れば「税負担を減らすために策を講じること自体が、立派な目的。それの何が悪い。日本の税金が高すぎるのが悪いんじゃ!日本に納税して欲しければ、タックスヘイブン並みに法人税率を下げろ!」と開き直って主張したいところなんでしょうが(笑)。

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