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免税事業者は消費税を受け取っちゃいけないの?

2013 - 05/20 [Mon] - 19:44

 ちょっと最近届きました税理士の会報、近畿税理士界を読んでおりますとその中にあるコラムに、例によって来るべき消費税増税の際のインボイス制導入に対する批判が書いてありました。税理士会としては、インボイス制と複数税率導入に反対の姿勢ですから、インボイス制に対する批判を会報に載せることは当然と言えば当然です。

 私は何度かこのブログに書いていますように、個人的には複数税率とインボイス制導入は決して悪くないと思っています。理由は、一言で言って「フェアで合理的」だからです。「請求書」「領収書」という証拠に基づいて粛々と処理を行うわけですから、そこに不正が入り込む余地が少なくなるのではないかと思うからです。

 私の感覚からすれば、税務会計処理が複雑になればなるほど税理士としての顧客に対するアドバイス、処理支援の機会が増えるので、本来的には税理士は複数税率とインボイス制導入には市場拡大を理由に賛成すると思っていました。しかし、いざ議論が始まってみますと、私が思っていた複数税率・インボイス制導入による税理士業界利益誘導よりも、税理士会としては単一税率維持のほうがメリットが高い、と判断したんでしょうね。

 ま、そのあたりは、実際問題として複数税率・インボイス制にしますと、誰がどう考えたって処理は複雑になってくるわけですから、そりゃ「ラクに税務会計を処理したい」という要望を重視するなら、複数税率・インボイス制を否定するしかありません。そのあたりは、もちろんわからないではありません。ただ、以前から、政治の話や、会計士との資格統合、あるいは税理士法改正の話題などでブログに書いていますように、「ごく狭い範囲の利益誘導・既得権維持」を目的とした議論であるならば、それは止めて欲しいと願います。

 我々は国からライセンスをもらって、日本の税務の専門家としての地位を与えられているわけですから、「納税者の手間が減る」とか「今まで通り税理士が儲かる」とかそんな視点ではなく、できればもっと大きな視野に立って「国や国民にとって本当に役に立つ税制のあり方」を考えていただければうれしいと思います。

 さて、インボイス制云々の話は本来このブログの本題ではなかったのですが(笑)、冒頭に書きました近畿税理士会の会報を見ていますと、そのインボイス制を否定する理由として

「税額別記のインボイスは、課税事業者のみが発行でき、免税事業者は発行できないことから、免税事業者からの仕入については、仕入税額控除ができなくなり免税事業者は取引から排除される恐れがある」

という一節が書いてあるんですが、これ、正しいんでしょうか?

 いえ、私の税法理解によれば、税法のどこにも「免税事業者は消費税をお客から受け取ってはならない」とは書いていないハズなんですよね。税法に書いてあるのは、ただ「基準期間の課税売上高が1千万円以下なら消費税の『納税義務』がない」ということだけだと思うんですよねぇ。税法に書いてあるのは「納税義務はない」ということだけで、どこにも「消費税を受け取ってはならない」なんて書いてないと思うんですけどねぇ・・。

 この手の議論をいまだによく見るので、やっぱり私の理解が間違っているのかなぁ、なんて思うときもあるんですけど(笑)、なんか皆さん不文律のように「免税事業者は消費税を受け取ったらダメ」っておっしゃる税務関係者が多いように思うんですよねぇ。

 前にも書きましたけれども、この1つの論拠として消費税基本通達1-4-5があるんですよね。そこには「免税事業者は、その基準期間中には消費税が課されていない」って書かれていて、それが本法と矛盾しているんですよねぇ。だって本法にはどこにもそんなこと書いていないのに、通達には「消費税を受け取っていない」という大前提があるわけです。

 まあ、不思議な話なんですけど、私の理解では、確かに免税事業者の課税売上高を判断する際にはそういう詭弁を使って判断すれば良いとは思いますが、実際問題として免税事業者が消費税を受け取ってもよいかどうか、という件については、受け取ってよいと思うし、むしろ積極的に受け取るべきだと思うんですよね。だって売上が1千万円を越えた時点で、お客さんに対して5%(今後は8%、10%)上乗せしてお金を請求するなんて、商売として不細工すぎるからです。それは税法云々、というよりも事業の戦略としてどう考えたっておかしいからです。

 だから、将来売上が1千万円を越えることを前提として、新規に事業開始した事業者には「消費税をきちんと乗せておいてくださいね」と指導しますね。だって条文上は全く問題ないわけですからね。むしろ基本通達の書き方がおかしいと思うんですよねぇ。

 まあ、それはいいんですけど、会報に書いてある「税額別記のインボイスは、課税事業者のみが発行でき、免税事業者は発行できない」という一節はおかしいと思うんですよねぇ。別に免税事業者であっても、税収別記のインボイスを発行しても税法上何ら問題が無いと思うし、むしろそうやって免税事業者であっても税額を別記することが当たり前になれば、基本通達1-4-5を見直せばよいだけだと思うんですよね。

 だから、当然ですけど「免税事業者は取引から排除される」ことなんてありえないんですよね。そもそも売上高が1千万円を超えているかどうかというだけの理由で、取引の選別が行われることなどもとよりあるはずがないし、あってはなりません。

 免税事業者が受け取る消費税を「益税」と非難する方たちもいますが、条文上受け取ってもよいと書いてあるわけですから違法でもなんでもありませんので、そもそも非難されるいわれがありません。お上がおおっぴらに「5%分儲けさせてやる」と言ってくれているわけですから、有り難く利益として受け取ればいいだけの話なんです。そこに問題があると思うのなら、免税事業者の課税売上高ラインを引き下げればいいだけのことなんです。簡単な話ですよ。

 ま、この点については税理士の中でもいろんなご意見があるんでしょうけど、私は単純に通達の書きぶりが悪いだけだと思っています。その理由は、単純に平成元年の消費税導入時の準備が悪かっただけだと思っています。免税事業者の営業展開を考える上でも、二十数年経ってもまだ本法と明らかに矛盾している通達がまかり通っているところを直すべきだと思うんですが、なぜか全然手を付ける気配はないようです。

 ・・まあ、もしかしてちょっと的外れなことを書いちゃったかも知れませんけど(笑)、これ、昔っから疑問に思っていることなんですよねぇ。免税事業者が消費税を取っていいのかどうかは正直わかりませんけど、それを理由にしてインボイス制を否定するのは、ちょっとこじつけじゃないかなぁ、という気がしますね(笑)。むしろ、税務の専門家として、現行の制度を積極的に改善するように働きかけるべきじゃないでしょうか?

 なんかもうちょっと「手間がかかって大変」以外に、複数税率・インボイス制を否定する理由を並べてもらえないでしょうかねぇ・・。だってクリアな税制、税率上昇に伴う痛みを減らすためには複数税率・インボイス制を導入することにもそれなりの合理性がありますからね。だからこそヨーロッパではそうしているんだと思いますからね。

 ヨーロッパで小規模事業者が淘汰されて大変、という事情があるのならわかりますが、そういう客観的な証拠もなく、ただ「手間がかかって大変だから」という理由で複数税率・インボイス制の導入に反対するだけなら、結局大甘で益税バリバリの簡易課税制度を導入してしまった過去の過ちを再び招くだけになっちゃうのではないかと危惧しますね。

 日税連の会報誌「税理士界」にも書いてありましたが、ヨーロッパ人より器用で細かいシステムを作ることが得意な日本人なら、いろいろな知恵やITの粋を集めてヨーロッパよりも良い複数税率・インボイス制を作り上げることができると思うんですが・・。残念ながら、インボイス制を積極的に評価し、導入に向けての可能性を探ろうとしているようには全く見えません。

 税理士会の議論を見ていますと、インボイス制の悪いところばかりあげつらって、「まず否定ありき」で話を進めていこうとしているように見えるのですが、その真の理由・目的は一体どこにあるのでしょうか?その方針は誰のアイデア、指示によって決定されたものなんでしょうか?それによって得られる利益は誰のためのものなのでしょうか?

 税還付などという、いかにも不正の温床になりそうな制度の導入を前提として制度設計に知恵を絞るだけではなく、複数税率・インボイス制導入の可能性についてももっと前向きに検討して欲しいと願いますねぇ。「めんどくさそうだから」と最初からインボイス制を否定しないで、インボイス制の良い部分にも目を向けて、もっと積極的にメリット・デメリットを検討すべきではないかと感じますねぇ。

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