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教育資金贈与の非課税制度はただの相続税節税対策

2013 - 04/17 [Wed] - 11:00

 今日の日経新聞を見ていますと、記事の中に「贈与革命の光と影」というタイトルで、近年導入される贈与税緩和策について書かれているものがありました。

 記事の中には平成27年から導入される相続時清算課税制度の年齢や対象の拡大についても触れていましたが、確かに近年の贈与税は緩和策が多く、相続税の課税強化とセットになって「高齢者の資産を下の世代に早く移転させて、お金を使え!」と促しているかのように見えます。

 確かに、高齢者が持っている資金を若い世代に移転させて、若い世代の消費拡大を通じて景気の浮揚を目指すこと自体は正しいと思うのです。そのこと自体は賛成なんですが、問題はやり方ですよねぇ。相続時清算課税制度については、その名が示すとおり、相続が発生したときに改めて税金を「精算」しましょう、というやり方ですから、長い目で見れば国としても税収の損得はあまりないと思うんです。

 その上で、この制度のメリットを受けることができるのは、将来も相続税が課税されないであろう日本の90%超の世帯に属する方たちであって、その方達は「どのみち相続税がかからないのだから、多額(2,500万円まで)の資産を下の世代に贈与で移転したって、そこに贈与税をかける必要などないじゃないか」という理屈で贈与税が課税されないことについて理解できるのです。

 これは「贈与税は相続税の補完税である」というルールをまさに表現している制度で、「税金の損得が将来にわたっても関係ないのであれば、贈与税なんか端からかけなきゃいいじゃないか。その方が景気対策になるし」と、非常にシンプルに分かりやすい制度だと思うんです。

 でも、今日の新聞記事にもありましたように、教育資金贈与の非課税制度のほうは趣旨が違いますよね。趣旨が違う、というより、表向きの趣旨と、実際にこれを利用するであろう納税者の側の思惑は全く違う気がするんですよね。だってこの制度は景気対策でもないし、適正な税収を確保したうえでの制度でも無いからです。

 じゃあ何を目的にした制度なのか?と言えば、それはズバリ「相続税の節税策」。ええ、この制度を利用できる人は、単純に相続税を減らすことができるわけです。それが相続時清算課税制度との大きな違いです。つまりこの制度を利用するかしないか、あるいは利用「できるかできないか」で、将来の相続税額が変わってくるのです。

 これは先ほどの「贈与税は相続税の補完税」という意味合いから見ても、明らかにおかしな話なんです。「過去のある一時期に設定された贈与税非課税制度を利用するかどうかで、将来の相続税額が大きく変わる」という制度なんですよね。

 記事にもありましたように、これは明らかに資金的に余裕のある、いわば大金持ちの方々の時限的な「相続税節税策」なんです。ええ、それもお上が「これを使って相続税を減らしてください」とわざわざお金持ちのために用意してくれた制度なんですよね。

 だって、この制度を使って資金を孫やひ孫に贈与すれば、「1,500万円*孫やひ孫の数」だけ相続財産を減らすことができますからね。もちろん、その資金の使途が「教育関係」と限定されていますが、その幅も結構広いですから、事実上の「お上が用意した相続対策」ですよね?

 記事によれば、商売に賢い信託銀行などは、既に平成26年の税制改正に向けて、結婚・出産・子育て資金の拠出を理由に贈与税の非課税制度の制定を要望しているのだとか。いやあ、さすがですね(笑)。

 しかし、何度も同じような話を書いて恐縮ですが、この教育資金贈与の非課税制度は制度としておかしいですよ。いえ、別に私はこれを「金持ち優遇税制だ!」として、左翼の人達のように声高に糾弾するつもりはないですし、これを利用して相続税を減らせる方々は積極的に利用することをお薦めしたいですが、ただ、この制度を利用できる人とできない人の不公平感というのは強く感じますよね。

 これは住宅取得資金贈与の非課税制度とも同じなんですが、結局これらの制度を利用できる人達って、お金持ちに限定されるんですよね。たぶん今回の教育資金贈与の非課税制度の「1,500万円」という金額も、住宅資金贈与の非課税制度と数字を合わせてきただけだと思うんですが、「ま、このくらいなら『金持ち優遇税制』と文句言うヤツも少ないやろ?」という程度の話だと思うんです。

 でも同じ金持ち優遇税制でも規模が違うんですよね。だって住宅資金取得資金の場合は、実際に家を購入しなきゃいけないんで、「誰でも彼でも、いつでもどこでも」できるわけじゃないし、それにお金も実際に外部に拠出しなきゃいけません。また、確かに景気対策としても有効でしょう。

 でも今回の教育資金の場合には、「使うか使わないかは別にして、相続税を減らすためにとりあえずマックスの1,500万円を孫やひ孫にばらまいておけ!」という感じに利用できるものですから全然違うんですよね。要するに「合法的名義預金」ですからね。

 もし孫やひ孫が30歳になった時にお金が余っていても、それはそのときに単なる受贈者本人の贈与税として申告すればいいだけ。相続時清算課税制度のように相続税と合算して税金を再計算する必要がありませんから、きっとほとんどのケースでは贈与税納税額はゼロになるか、もし税額が出ても相続税と比べれば少なくて済むケース(そもそも孫やひ孫に相続財産がなければ相続税の対象外)ばかりでしょう。

 確かに、相続税課税の強化にあたり、時限的に相続税の緩和策を提示したことにはそれなりの意味があるのかも知れません。上の世代から教育資金をもらった下の世代が、余ったお金を使って消費を拡大してくれる二次的な効果が期待できるのかも知れません。お金持ちを税制面で優遇させて、彼らの消費意欲を刺激する事は私も大いに賛成しています。

 しかし・・、一言で言って「やりすきじゃないの?」という気がするんですよね。「なんでそこまでお金持ちの税金対策をわざわざお上が制度として用意してあげる必要があるの?」と思うんですよね。そりゃ、それは私がお金持ちじゃないから僻んでいるだけかも知れません(笑)。

 でも、世の中の90%以上のご家庭には無縁な制度ですし、これだけの贈与を行ってもご自分の生活に影響がないような、本当に相当なクラスのお金持ちだけが恩恵を受ける制度である、というところに大きな疑問を感じるんですよね。そして、お金持ちの消費を促進させるのではなく、お金持ちのさらなる資産拡大を税制面で支えることについて、「それは違うんじゃない?」と思うのです。

 もしかすると、小規模宅地の拡充を行ったのと同じように、これが相続税課税強化に対する緩和策メニューのひとつなのかも知れません。しかし小規模宅地と違い、この制度を利用できる人があまりに限られるし、結果的にお金持ちの財産保全と節税だけに使われることになるので、若干の理不尽さ、不公平感を感じるところはありますねぇ。

 もちろん、私は税理士ですから、お金持ちのお客さんに対しては「こんなすごい相続税節税策ができたみたいですよ!期間が限られていますから、お孫さんのためにお金を贈与しませんか?」とアドバイスするとは思いますけどね(笑)。でも、前にも書きましたように、それをお客さんに説明するからといっても、私たちが税務申告などを行うことは全然ないので、実際に私たちがお客さんから得られるメリットはゼロ(笑)。

 全然カネになる話じゃないんで、ホントはこんなの無視したい気もするんですが(笑)、しかし依頼者の税額を最小限にする努力を行う義務があるのが税理士ですから、例え自分に何のメリットもない節税策であったとしても、お客さんに説明しなければならないのがジレンマ(笑)。ホントは「こんなの信託銀行や銀行が勝手に営業したらエエねん!」と言いたいところですが、お客さんに信託銀行や銀行から先に情報が流れるのもなんとなくシャクですよねぇ・・。ああ、めんどくさ(笑)。

 こんな制度ができちゃったのは、やっぱり税理士のお偉いさん達が税制改正の過程できちんと制度の内容を精査しなかったからでしょうね。依頼者の相続税を大いに減らす可能性の高い制度であるにもかかわらず、全く税理士が絡む余地のない制度をスルーさせてしまったという、実にマヌケな話ですよね。

 だって、こんな税理士関与をほぼ完全に排除した資産税節税策なんて今までなかったと思いますし、税理士としてとてもかかわりにくい制度なんですよね。でも、制度の内容を理解して、お客さんにアドバイスしなければならないというところが立場的にとてもツラいです(笑)。

 はっきり言って、この制度を導入してもらってうれしいのは、納税者はもちろんのこと信託銀行や銀行などなんですから、この制度導入を役所に一生懸命働きかけて制度実現を果たした銀行・信託銀行から紹介手数料をもらえないと、税理士はモチベーション上がりませんよね?(笑)。

 だって下手すれば、紹介した先の信託銀行が「なんなら相続財産全部の管理や、相続税を含めた税務申告のすべてをうちでお請けしましょうか?(もちろんお抱えの税理士に仕事を回す!)」ってお客さんにアプローチしてお客を取っていく可能性だって高いわけですからね。そうなるとタダでお客を信託銀行に紹介なんかしたら、もう税理士は踏んだり蹴ったり状態・・(笑)。

 今回の制度などを見ていても、税理士ってお上に対する政治力低いなぁ、って思いますね(笑)。というか、業界としての損得計算がイマイチ下手って気がしますねぇ・・。「納税者権利憲章」の制定や「税理士法改正」なんかに全精力を傾けて取り組む必要性って、正直どれほどの優先順位なんでしょうか・・?(笑)大事なことかも知れませんけど、頭でっかちになりすぎて、実をとることを忘れたら意味ないですよ。

 税理士もビジネスですからね・・。

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